国際協力を学ぶ。開発学入門とその系譜【保存版】

 

前回、貧困とは何か。開発学とはなにかをいうお話をしました。まだの方は下の記事から先にご覧ください。

貧困とは何かを知ろう。「貧しい」を学術的に理解しよう!

2017年9月20日

開発学とは、どうしたら世界中のひとがもっと豊かになれるかと考える学問という話でした。そのため、時代を経て、さまざまな考えが生まれてきています。常に理論や考えがアップデートされているようなものです。

この記事では、過去にどんな考え方をしていたのかをみていきたいと思います。

全体的な印象としては、「先進国が途上国のためにやってあげているもの」という上から目線から、「一緒に頑張ろう」という目線に変わってきたようです。
Rey
この記事は、国際協力や開発学に興味のある大学生むけに書いています。そのため、ところどころに引用書籍や参考書籍をたくさん掲載しています。もっと詳しく学びたい方はご活用ください。

 

1構造主義 (1940 年代後半 -1960 年代前半)

「貧しい国」と「豊かな国」の2つは異質である

途上国においては、供給サイドが硬直しており、価格制度のメカニズムが働いていない。そのため、それらの国は、望ましい経済成果と市場機能が達成できていない。つまり、ちょっと大げさに言うと、「途上国は技術がなくって、経済が悪い」という見方です。

なんなら、途上国の人々は「怠惰で非効率であるため貧しい」という考え方をしていました。

そんな「貧しい国」と「豊かな国」の経済格差をなくそう、という方向性でした。

【プレシュビッシュ=シンガー命題】
「先進諸国に対する発展途上国の交易条件は構造的に悪化する。歴史的にみて、技術の進歩の波及は不平等であり、これが世界経済を工業中心と一次産品の生産に 従事する周辺国とに分割することに貢献し、その結果両地域間の所得の成長に差 が生まれることになった。」とプレシュビッシュが述べた。

この命題は、1964 年に行われた第一回国連貿易開発会議 (UNCTAD) のなかで、 プレシュビッシュが事務局長をつとめ、「新しい貿易開発を求めて」と題する報告書で主張したことで一躍世界の脚光をあびた。

  • UNCTAD( 外務省訳 )『プレシュビッシュ報告 – 新しい貿易政策を求めて』日本国際協会 ,1965
  • Singer, Hans.W ( 大来佐弐郎監訳)『発展途上国の開発戦略』ダイヤモンド社 1976

 

Rey
「途上国は、技術の進歩ができなくてかわいそうだ。彼らを助けてあげないと!」という、ちょっとだけ恩着せがましい感じでした。当時はこうゆう考えだって、画期的だったんでしょうけど。

 

 

2新古典派アプローチ (1960年代後半)

経済発展すれば、貧困はなくなる!途上国が貧しいのは、人間に対する投資(教育・保健)が足りないからにちがいない!

価格メカニズムによる需要供給能力を信頼する経済学を中心とする考え方です。つまり、経済発展=貧困の解消、でした。

途上国が貧しいのは、人的資本(教育及び栄養)への投資が少ないためであり、 また政府による過度の介入あるいは保護主義的な輸入代替工業化戦略のもとで市 場が歪められてしまったためとされていました。

貧困を解決するために、以下の2点が必要であるとしていました。

  1. 人的資本の投資
  2. 市場の自由

以前は、途上国の人々を「怠惰で非効率であるため貧しい」という考え方をされ てきたが、この新古典派アプローチでは、途上国の人も「変化する経済状況と機会に適応し、革新する意欲がある人」という考え方にかわりました。すなわち、貧しい人達自身では なく、その社会に問題があると考えられるようになった。

Schultz, T.paul「Educayion Investments and Returns」『Handbook of Development Economics 』vol.1 1988 (シュルツ『教育と開発とのミクロ経済関係』)
これは主に「成長媒体保障」戦略ともいえ、香港、シンガポール、韓国、クウェー トといった国はこの戦略によって成長した。かなりトリックルダウン的。 しかしながら、どのような教育方法がその国によって、効果的であるかは、当該 国の状況によって、全く異なる。
【トリックル・ダウン理論】
貧困の撲滅は、経済成長によって解決できるという考え方。すなわち「富む者が 富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる」という考え方。

 

 

3改良主義 (1960 年代後半 )

Basic Human Needs (基本的人権)の充足を主題とした考え方。

トリックルダウン理論に対する 疑義から発生しました。これは、改めて「開発の目的」を問う姿勢が特徴的です。「貧しい 人々」という主体自体にはじめて焦点をあてた。支援対象者=受給者であり、トッ プダウン的な性格をもちます。つまり、政府の介入を大幅に認め、「公的支援手動保障」 戦略を行うということです。

【ダドリー・シャーズ】
1969 年のランチトークで、開発の意味について言及した。 ILO(国際労働力機関)は、世界雇用プログラムを設立し、大衆の所得と生活水 準の向上にとって、働く機会と生産的労働力を増やすことが最も効率的であると 論じた。とりわけ、ケニア・レポートはその代表的な成果となった。

しかし、こ こでは「働く貧民」が発生するおそれがあるとされ、「生産的雇用の拡大、貧困の 断絶、極端な不平等の縮小、および成長成果のより平等な分配」として「成長の 再分配」戦略が採用された。世界銀行は理想主義を掲げた。

【Basic Human Needs (BHN)】
経済成長ではなく、「人間の基本的ニーズ」に焦点をあてた。UNDP は人間開発 「Human Development」を掲げて、基本的 Needs を剥奪されているひとに関して焦点をあてた。具体的には、以下の3点。

  1. 衣食住の権利
  2. 保健教育
  3.  雇用・サービス

 

4新古典派アプローチと改良主義の同時代性(1960 年代後半 )

改良主義と新古典アプローチは同時代的に存在しました。ストリーテンはこれら二つ の考え方の違いを、以下のようにたとえた。

  • 改良主義「人間自身を目的とみなす人道主義者」
  • 新古典ア プローチ「生産性の観点から人を見る人的資源の開拓者」

 

 

 

5人間開発 (1990 年代以降 )

 

1980 年代からは、開発経済学の転換期となってきます。

IMF や世界銀行は、構造調整のプログラムを実施し、新古典アプローチ・開発経済学を支配しました。

一方で これに批判的な立場を示したのが、UNICEF で、「人間の顔をした調整」1987 等で、 Basic Human Needs アプローチを示します。ここで、経済成長の復興と傷つきや すい人々の保護を結びました。

これに影響をうけて、1990 年に世界銀行が発表した「世界開発報告」「貧困」では、 新古典派にたいする疑問が示され、情報の経済学や、内生的成長論、アマルティア・ センによるケイパビリティ論が脚光を集めました。

 

【ケイパビリティ論 (アマルティア・セン )】
「エンタイトルメント」(権原)「ケイパビリティ」( 潜在能力 ) というふたつの あたらしい基準をつかった。

  • ケイパビリティとは、「ある人が、経済的、社会的、 および個人の資質のもので達成することのできる、さまざまな「であること」と「す ること」を代表する一連の選択的機能の集まり」である。
  • エンタイトルメントは、「ある個人が支配することのできる一連の選択的財の集まり」とした。

ここでは、地域、社会階層、性差などといったそれぞれのレベルで、どのような ケイパビリティが欠如しているのかを歴史学的、社会学的に具体的に分析するこ とが必要であるとしている。彼らのニーズが何か、ではなく、もし彼らが本来の 力を発揮する自由を与えられたならば、動行動するか、ということ。そしてその 自由を拡大するためにはなにをするべきか、ということ。

 Empowerment アプローチ

  • 剥奪されている力(権利)をふたたび獲得すること。
  • 当事者の主体性
  • 外部者の機会の付与
  • 当事者の能力を発揮しやすい社会環境づくり
  • 双方の関係性

 

6現代

現代では、援助側と受け入れ側の相互関係が求められています。 近年では、MDGsを軸としたものから、SDGsに受け継がれました。これについては、また次回に書いていきたいと思います。

  • MDGs : Millenium Development Goals
    2000年につくられた、2015年までの世界の解決すべき課題を盛り込んだもの。
  • SDGs: Sustainable Develpment Goals
    MDGsがおわり、上記を踏まえて、まだ解決されていない問題や、新しく表面化した問題を追加したもの。持続可能性を大事にしている。

 

 

7参考文献

この記事をかくにあたって、以下の本を参考にしました。本文では、簡略化し、わかりやすく話しているので、興味があれば以下のような本をご自身で読むことをおすすめします。

  • 黒崎卓 , 山形辰史『開発経済学 : 貧困削減へのアプローチ』日本評論社 , 2003.5
  • リチャード・コール『開発途上国におけるグローバル化と貧困・不平等 』明石書店 , 2004.11
  • 絵所秀紀 , 穂坂光彦 , 野上裕生 編著『貧困と開発 』日本評論社 , 2004.11
    ▼シリーズになっているので、ほかのもの続けて読むのももオススメです▼
  • 絵所秀紀 , 山崎幸治『開発と貧困 : 貧困の経済分析に向けて 』アジア経済研究所 , 1998.3
  • アマルティア・セン『集合的選択と社会的厚生 』勁草書房 , 2000.8
  • アジット・S. バラ , フレデリック・ラペール『グローバル化と社会的排除 : 貧困と社会問題への新しいアプローチ 』昭和堂 , 2005.4
  • 山口しのぶ , 毛利勝彦 , 国際開発高等教育機構 編『ケースで学ぶ国際開発』東信堂 , 2011.9
  • ジェレミー・シーブルック『世界の貧困 : 1 日 1 ドルで暮らす人びと』青土社 , 2005.8

少し長い文章になってしまいましたが、開発学っておもしろいですよね?人権や人間の尊厳などの話もあり、経済の話もあります。大きな国同士の国際関係のやりとりもちょっと関わってきたり。

学べば学ぶほど楽しくなる分野だと勝手に思っているので、もし楽しんでいただけると嬉しいです😊

Rey
読んでくれてありがとうございます。他の記事も、これからどんどんアップしていく予定です✏️ SNSフォローよろしくお願いします🙌 @reyblueberry

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